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波瀾万丈の写真

更新日:2021.05.07波瀾万丈

更新日:2021.05.07

波瀾万丈

 昨年の秋、「実りの秋」で蒸し芋を食べるミツバチと園内のミツバチの巣を紹介しました。

この記事の中で「秋はスズメバチやクマが巣を襲いに来る季節でもあるので、巣の近くのミツバチは多少気が立っています。」と書いていましたが、さすがにクマは来ないものの、スズメバチの襲来にあってしまいました。

オオスズメバチ.jpg
▲ミツバチの巣を乗っ取ったオオスズメバチ
※この写真はミツバチが巣にいなくなった後で、蜜を食べに来るスズメバチも落ち着いているので近づくことができています。ミツバチが反撃しているときはスズメバチもミツバチも気が立っているので近づくのは危険です。また、秋のスズメバチの巣は10メートル以内に近づくと攻撃されるので危険です。

 スズメバチは他の昆虫や動物の死体の肉などを肉のかけらや肉だんごにして巣に持ち帰り、スズメバチの幼虫の餌にします。ミツバチの幼虫はスズメバチの幼虫の餌になります。また、ミツバチは巣の中に蜜を貯めているので、スズメバチの成虫にとってはおいしい餌がたくさんあるところです。スズメバチというと肉食のイメージですが、肉を食べるのは幼虫で、成虫は甘い花や実、樹液などが好きで、狩りの合間によく道草を食っています。(参考:俣野別邸庭園「ホソバヒイラギナンテンとスズメバチ」)

 スズメバチは強力な大あごを持っているのでミツバチの働きバチを次々とかみ殺します。スズメバチに襲われたニホンミツバチは、たくさんの働きバチがスズメバチに飛びついていっせいに羽ばたきます。この時にミツバチの体温が上がり、スズメバチは熱で死んでしまいます。こうしてお互いに殺し合うので、巣の入口の下にはミツバチとスズメバチの死体がたくさん落ちている状態になりますが、アリたちが持っていってしまうのでじきに死体はなくなります。

 ニホンミツバチはスズメバチに対抗するので、数匹のスズメバチが来たくらいなら巣を守り切ることもありますが、今回は力の強いオオスズメバチが次々とやってきてしまいました。徐々にミツバチの巣の入口に常にスズメバチがいるようになり、その後ミツバチの姿は消えました。おいしいおやつを食べに来るオオスズメバチがたくさんたむろするのみとなりました。(こうして見るとスズメバチはなんだか悪いやつのようですが、自然の構造から見るとスズメバチも他の生きものが増えすぎるのを防ぐ役割を持っているので、いてくれないと困る存在です。)

 秋の終わり、日が暮れて寒くなるとスズメバチも去り、中をのぞいてみると

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▲アリも行列を作って中から食べ物を運んでいます。

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▲中にはハチの巣のハニカム構造が見えます。向かいの木の壁にはゴキブリの幼虫がいます。いろいろな虫が空き家を活用しています。

 ミツバチの女王バチや働きバチたちは逃げることができたのか、またミツバチがこの巣を使うことはあるのか、冬が過ぎて春がやってくる時季に気になって何度ものぞいて見ていました。

 そうしたら、ついにミツバチが戻ってきました。

ニホンミツバチの巣003.jpg
▲写真は5月3日撮影

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▲写真だとわかりませんがひっきりなしに出入りしていてとても忙しそうです。

 スズメバチに乗っ取られた巣でも翌年またミツバチの巣として使うということがわかりました。おそらく毎年新女王が巣から旅立っていると思いますし、ミツバチは巣の人口が増えると「巣分かれ」をして半分くらいが別の巣に引っ越していくのですが、そういう同じ家系のハチが来たのか、全く別のハチが来たのか、それはわかりません。野毛山動物園のミツバチが引き続き活動しているというのは生物多様性のひとつとしてよかったと思います。

 しかし、園内のハチの巣はご来園のみなさまから近いところにあります。これまでも危険な状況、危険ではない状況についていくつか例を挙げていますが、出会い頭の事故もあるので、くれぐれもハチを驚かせたりしてリスクを高くしないようにご注意ください。

[桐]