更新日:2015.08.20ホンドタヌキの子育て
更新日:2015.08.20
ホンドタヌキの子育て
動物病院のこの時期は例年、鳥のヒナたちのお世話で大忙しです。
が、今年は…
鳥のヒナはもちろんですが、哺乳類の保護が目立ちました。
ホンドタヌキ6頭の人工哺育から始まり、ヒナコウモリの自然哺育(以前ブログで紹介したもの)、そしてアブラコウモリの人工哺育…
時期こそ重なっていないものの、てんやわんやな日々で、毎日があっという間に過ぎていきました。
それに比例して動物たちはあっという間に大きくなり、そして逞しくなっていきます。。。
今回は、ホンドタヌキの成長をご紹介したいと思います。
5月、6頭のホンドタヌキが保護されてきました。
まだ目も開いていない、100gにも満たない小さな小さなタヌキたちで、へその緒がまだついていました。
恐らくまだ母親からの初乳ももらっていないのでは…というほどの頼りなさでした。
保護されたその日から、6頭の育ての親になるべく、飼育係がお世話をする人工哺育が始まりました。
生まれてすぐのタヌキたちはまだ自分で排泄する力もありません。
そのため、排泄を促して、ミルクを飲ませる作業を6頭分繰り返します。
なんせ頭数が多く、まだ吸い付く力もない子タヌキたち。飲んだ量に一喜一憂しながら、
6頭目が終わる頃には、また一頭目の哺乳の時間がやってきて…というように、全てが子タヌキたちの哺乳に合わせたサイクルに変わっていました(笑)
本当に忙しい日々で、たくさんの職員の手を借りながら…
そのうちタヌキたちも目も開き、体重も順調に伸び、飲む力も量も増して逞しく成長していきました。
体重も1キロに迫ったところで哺乳瓶からではなく、お皿から直接ミルクや餌を食べれるように離乳をしました。
離乳がなかなか難しく、吸うことには慣れていてもお皿から舐めたり、直接口の中に入れて噛んだり食べたりすることに慣れていないのです。(全頭いやいや…と、拒否しています。)
そのためかなり手こずり、なかなかスムーズに離乳には至りませんでした。
こんな時、タヌキの母親がいたら…と、思ったものでした。
成長途中で残念ながら一頭が亡くなってしまいましたが、五頭は体重測定も難しいくらい大きく成長しています。
もう少ししたら、野生に帰る時期です。
生まれて間も無く何かの理由で母親と離れてしまった子タヌキたち。
厳しい野生で強く、生きていくことができるでしょうか。
本来ならば成長とともに、母親から様々なことを学び独り立ちを迎えます。
多くの人の力を借りて無事に成長したタヌキたちが、頑張って生き抜いていくことを祈っています。
傷病鳥獣保護では、タヌキだけに限らず、野生に近い餌をあげることはできても、餌の取り方や身の隠し方、生き方などすべてを教えてあげることはできません。
本当に保護が必要だったのか、近くで弱ったり、傷ついたり、子供だけの鳥や動物を見つけた時、私たちはどのように関わって行けばいいのでしょうか?
以前は森や林に暮らしていたタヌキが、住む場所やエサを求めて降りてきているのです。
人との暮らしの近くに、徐々に近づいて来ていると言われているタヌキ。共に日本に住んでいる仲間として、これを機に1度考えていただけると嬉しいです。
飼育展示係 矢口 茜