
更新日:2025.07.04保全管理研修に参加しました
保全管理研修に参加しました
先日、当協会の職員向けの研修の一環として、金沢動物園で保全管理研修が行われました!
どのようなことを行ったのか、参加した時の様子をお伝えしたいと思います。
※当協会は横浜市3動物園の管理運営を行っています。
今回、私たちが行ったのはヤマアカガエルの産卵場所を確保するための水場づくりでした。
どのように水場を作成したのかご紹介する前に、まずはヤマアカガエルについて知ってもらい、どうしてヤマアカガエルの産卵場所を整備する必要があるのかご説明したいと思います。
ヤマアカガエルは、本州・九州・四国・佐渡島に生息する日本固有種のカエルです。生息環境としては主に山地や森林であり、繁殖期になると湿地や池、沼、田んぼなどの水場に集まり産卵します。
〈ズーラシアにも生息しています〉
産卵期は1~6月で、温暖な地域ほど早い時期から産卵を開始します。
〈ヤマアカガエルの卵塊〉
〈ヤマアカガエルのオタマジャクシ〉
一部の県や地域ではヤマアカガエルの減少が確認されており、絶滅危惧種として指定されているところもあります。
金沢動物園では、2014年からヤマアカガエルの産卵状況調査を行っていますが、近年産卵数が減少していることが明らかになっています。
考えられる原因としては、
①外来種による食害 ②夏季、冬季の過度な乾燥 ③餌となる昆虫の減少 ④水辺環境の減少による繁殖の低下
があげられます。
今回は④水辺環境の減少による繁殖の低下の解決のために、産卵場となる水場の形成を行いました。
水場の形成方法は様々あるそうですが、今回は比較的簡単な方法として、トロ舟をヤマアカガエルが生息する場所に設置する、というものでした。
〈トロ舟を設置する予定の場所〉
でも、ただトロ舟をその辺に置けばよい、というものではありません。
今回はヤマアカガエルの産卵場を作ることが目的なので、ヤマアカガエルがトロ舟の中に入れなければ意味がありません。さらに、ヤマアカガエルの卵は水温28度を超えると死んでしまうため、直射日光の当たらない場所を選ぶなど、設置する場所を考えることも大切です。
設置予定の場所は斜面になっていたため、地面を直角に掘り、掘ったところにトロ舟の片側を合わせて設置し、周りを土で埋めることでトロ舟を地面と同じ高さにする、という方法で設置しました。
言葉だとわかりづらいので図に描いてみました↓
これなら、大きな労力を使うことなく簡単に水場を形成することができます。
今回は全部で5個のトロ舟を設置していきました。
まずは地面を直角になるように掘り進め...。
いい感じになったら、トロ舟の片側を掘った部分に合わせて置きます。
トロ舟の周りを土で埋めたら...。
あっという間にヤマアカガエルの産卵場となる水場の完成です!!
木などを入れてあげると、よりトロ舟に入りやすくなります。
今回は梅雨時期の設置となったので、水は自然に雨水でたまるのを待ちます。
水場は作っておしまい、というわけではありません。
落ち葉などがたまってしまうと、水質が悪くなったり水深が浅くなったりしてしまうため、年に1度、ヤマアカガエルがやってくる前に落ち葉さらいを行うなどして管理をすることも大切です。ただし、ヤマアカガエルのオタマジャクシは落ち葉を餌とするため、取りすぎも禁物です。落ち葉さらいの際は生き物調査をして、形成した水場にどんな生き物がやってきたのか知ることも重要になります。
作業中は、今年無事に育った小さなヤマアカガエルにも出会うことができました。
いずれはこの子たちが、今回形成した水場を使用して繁殖してくれるかもしれません。
保全管理研修の様子をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
動物園は飼育している動物だけでなく、地域の身近な生き物たちの命が繋がれていく場所でもあります。そうした場所を守っていくことも、動物園の大切な役割です。
今回は金沢動物園での活動をご紹介しましたが、ズーラシアでも様々な取り組みを行っています。今回学んだことを生かして、身近な生き物を守る取り組みにも力を入れていきたいと思います!!
地域の生き物保全プロジェクト 田中