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更新日:2021.10.16今季の敵

更新日:2021.10.16

今季の敵

園内のミツバチの巣のお話です。
(注:ミツバチまみれの画像が出ますので、ハチや虫が苦手な方はスルーしてください。)

昨年の秋にはオオスズメバチの襲撃にあい、巣を乗っ取られてしまったものの、春にはまたミツバチが巣を使いはじめたというところまでブログに書きました。

今年も巣は規模を徐々に大きくして、夏には暑い巣の中を冷やすために入口で送風する扇風機係のミツバチがたくさん見られました。巣の中の様子は見られませんが、おそらくたくさんの小部屋でたくさんの幼虫を育てていると思われます。

夏のミツバチの巣の入口

▲巣の入口にたくさんのミツバチ

10月ともなると秋は本番、花の蜜や花粉を集めてきて幼虫に与えたり巣に保管したりします。巣の景気が良くなる頃になるとやって来るのが招かれざる客、蜜や幼虫を狙う敵たちです。具体的に言うと、クマ、ヒト、スズメバチなどです。いずれも古くからミツバチの幼虫やハチミツをおいしい高栄養の食糧として重宝してきました。

野毛山動物園ではクマがミツバチの巣を襲うことはないのですが、人が近づきすぎると巣を狙っていると思われるかもしれないので要注意です。

そしてやってくるスズメバチ。今年、近所に巣を作ったスズメバチはどうやらキイロスズメバチのようです。キイロスズメバチが時々やってきます。

ミツバチの巣のまわりを飛んで様子をうかがうキイロスズメバチと警戒するミツバチ

▲ミツバチの巣のまわりを飛んで様子をうかがうキイロスズメバチと警戒するミツバチ(画像クリックで動画ファイルが開きます)

ミツバチはスズメバチに働きバチが襲われたり巣に侵入されそうになったりすると「熱殺蜂球」(=ねっさつほうきゅう、ミツバチのかたまり)を作って対抗します。働きバチがいっせいにスズメバチに飛びついてミツバチのだんごの中に閉じこめ、体温を上昇させてスズメバチを熱さで殺してしまいます。キイロスズメバチは最も気性の荒いスズメバチとして知られますが、昨年のオオスズメバチと比較して体格が小さいので、この熱殺蜂球の効果が大きいようです。大きなオオスズメバチは近寄るミツバチを次々と噛み殺してしまうのですが、キイロスズメバチくらいだとあっという間に覆ってしまうことができるようです。

熱殺蜂球でスズメバチを攻撃中のミツバチ

▲熱殺蜂球で攻撃中のミツバチ(画像クリックで動画ファイルが開きます)

(注:ミツバチを狙うときのスズメバチは、自分たちの巣にいるときと違って多少近づいても襲ってきませんが、怖がって手を振り回したり大声を出したりするとスズメバチとミツバチの両方に襲われる可能性があり大変危険です。慣れていない人は近づかないようにしてください。)

熱殺蜂球はスズメバチが完全に死ぬまで、少し長めに続けてなかなかやめません。ニホンミツバチはセイヨウミツバチに比較して高めの温度(摂氏47度くらい)を出せるそうですが、スズメバチを熱死させる代わりにミツバチ自身もダメージがあり生存期間が短くなってしまうようです。

ミツバチの巣の下に落ちているキイロスズメバチの死体

▲ミツバチの巣の下に落ちているキイロスズメバチの死体

熱死したキイロスズメバチ

▲熱死したキイロスズメバチ

(注:スズメバチの死体は、ハチが死んでいても針に刺されることがあるので、針に近い腹部には手で触れないようにしてください)

動物園の中では、展示している動物だけでなく自然の生きものも見られます。

ミツバチの巣が今年はスズメバチに乗っ取られずに過ごせるのか、秋の終わりまでその様子を観察していこうと思います。

[桐]