更新日:2022.02.03【思い出の金沢動物園10】タタミで暮らしたインドサイ
【思い出の金沢動物園10】タタミで暮らしたインドサイ
金沢動物園の思い出と言えば、インドサイが印象深いです。
(2011年のインドサイ展示場の様子)
インドサイを担当した2010年ごろ、雄のキンタロウは足を患っていました。インドサイの足のトラブルは世界中の動物園の課題で、当時は治療法も確立されていない状況でした(今ではだいぶ改善しつつあります)。獣医と相談し、様々な治療を試しましたが、どれもうまくいかず、難儀しました。私は飼育員なので、治療ではなく、インドサイを健康に飼う方法を考えることにしました。
(野生のインドサイが住んでいるところ)
インドサイは湿地で暮らすサイです。
湿地の環境、特に地面はどんな条件なのか、どんな素材なら動物園で使えるのか、試行錯誤の一つが「畳の上で飼う」ということ、キンタロウは一時期、和室で暮らしたのでした。
(畳に上がるキンタロウ)
キンタロウはドイツ生まれなので、生まれて初めての「TATAMI(タタミ)」をどう感じたのでしょうか。
飼育員的には畳もなかなか良かったのですが、湿地の地面を再現するには十分ではありませんでした。その後も四苦八苦しながら床材を工夫し、ついには寝室の中と展示場のほとんどの場所を改良することができました。2015年の春、キンタロウの足の傷は消え、今も再発することなく飼育しています。
(インドサイの展示場に大量の木を埋める、クッション性が良くなる)
畳を持ってきたり、地面に穴を掘って大量の木を埋めたり・・・変わったことをたくさんしましたが、同僚の協力無くしては実現できませんでした。ありがたい限りです。そういえば、チャンプ(インドサイの名前)が生まれたときは、予定日を過ぎてもなかなか産まれなくて、ずいぶんやきもきしたのを思い出しました。
(チャンプ、寝る子は育つ)
インドサイの担当ではなくなりましたが、動物はいまだにわからない事がたくさんあるし、実現できていない飼育のアイデアも沢山あります。まだまだ試行錯誤は終わりそうにありません。
先崎