
更新日:2025.07.05ひなぎくありがとう
ひなぎくありがとう
2025年7月2日、コアラのひなぎくが天国へ旅立ちました。
6月18日に歩様に違和感があり、夕方検査をおこなったところ、リンパ腫を発症していることがわかりました。検査後、一旦展示場へ戻り、姉のたんぽぽと甥のポポロと1日一緒に過ごしましたが、落下の恐れを考慮して19日の夕方から1階の個室(非展示施設)へ移動しました。
コアラのリンパ腫は、現在治す手立てはなく、緩和ケアをすることしかできません。それでも、なんとかできないものかと管理職と獣医と話し合いを行いました。抗がん剤の投与も検討しましたが、ひなぎくの血液の白血球の数値は、これまで獣医も見たことがないほどの高い値で、薬の使用に耐えられず逆に苦しめて命を落としてしまうかもしれないこと、輸血をする場合の血液をどうするか...?など今の技術ではやはり難しく、ひなぎくが1日でも長く、少しでも過ごしやすいように、ケアをすることしかできませんでした。
個室へ移動したら食べなくなってしまうかと思いましたが、ひなぎくは、好きなユーカリを選んで食べてくれました。食べている姿はいつものかわいい表情で、何かの間違いだったら...と何度も何度も思いました。ウンチもいつもとかわらないきれいな粒状でした。
しかし、日に日に食べる量は減っていきました。少しでも食べて欲しくて、園内のやわらかそうなユーカリを探しては、ひなぎくに持っていきましたが、6月30日から採食が見られなくなりました。
7月2日の朝、床にうつ伏せていたので起こすとまだ、表情はしっかりしていました。床にコアラのぬいぐるみを置き、抱かせると排尿をしました。お尻を拭いてから半丸太にしがみつき、うつ伏せて休みました。作業をしながら様子を見ていましたが、8:30にひなぎくの顔を見た1分後、旅立ってしまいました。
「がんばって」と声をかけてはいけないほど、ひなぎくはがんばっていました。命がつきる瞬間まで懸命に生きる姿は、本当に強く尊いものでした。


ひなぎくは、ぼたんの第2仔として生まれました。出袋後はほとんど袋の中に戻らない大きなこどもでした。


天真爛漫という言葉がぴったりな自由でよく食べる元気なメスに成長しました。
こどもの頃は姉のたんぽぽの背中に乗ることもあり、優しい母と姉に見守られ、わんぱくな一面もありました。
夜中に観覧用ガラスの縁にしがみついて困っていたり、横木にぶらさがったまま移動したり、他のコアラとよくじゃれていたり...見ていて飽きないおもしろいコアラでした。
甥のポポロが小さいときは、今度はひなぎくがポポロを背中に乗せました。乗せながら、ユーカリを食べたり、寝てしまったり、少し適当に見えることもありましたが、いつもポポロをちゃんと見ていました。


ポポロが大きくなり、ちょっかいを出してくると怒ったり、あしらったり、自分から離れたりしていましたが、それでもやっぱりポポロを気にかけていました。
ひなぎくは本当に見ていてクスっと笑ってしまうコアラでした。
ひなぎく
リンパ腫を発症しているとわかったとき、たとえ完治しなくても、ずっとそこにいてくれさえすればいいと本気で思いました。
いつもより食べる量が少なくてもウンチの数が少なくても、ひなぎくが生きていてくれればそれでいいと思い続けていました。
病気を忘れさせてくれるような食べっぷりを見たときはうれしくて仕方ありませんでした。ひなぎくのことが本当に大好きでした。
ぼたんのこどもに生まれてきてくれてありがとう。
たんぽぽの妹になってくれてありがとう。
ポポロのこといつもちゃんと見ててくれてありがとね。
天国で大好きなぼたんと仲良くじゃれながら、一緒にみんなのことをずっと見守っていてください。
金沢動物園のコアラ舎を幸せにしてくれてありがとう。
(コアラ担当 かそ)
*献花台につきましては、野生動物等による衛生上の観点から、設置を取りやめさせていただいております。
ご理解の程、何卒よろしくお願いいたします。