更新日:2019.02.26疥癬タヌキ
疥癬タヌキ
こんにちは。金沢動物園動物病院です。
もうすぐ春になりますが、まだまだ寒さが厳しく、毎日寒さに震えながら園内の動物を診察しています。
金沢動物園の獣医師はみなさんご想像通り、園内で生活している様々な動物を治療していますが、市民の方々等によって保護され持ち運ばれた傷病鳥獣の保護活動も行っています。
今回は傷病鳥獣のタヌキについて少しお話します。
金沢動物園に運ばれてくる動物は様々な種類の鳥、タヌキ、コウモリなどです。
運ばれて来た時には怪我をしており、それらの治療を行って再び野生に帰すのが目的です。
皆さんは、一体どれ程の数の傷病鳥獣が金沢動物園に運ばれてくると思いますか?
飛んでいる鳥はよく見かけるけど怪我している鳥はあまり...タヌキも普段生活していて全然見かけないし...週に1頭か2頭ぐらい...?と思われますか?
いえ、全くそんな事はありません。どんどん運ばれてきます。ペース的には1日に1羽(頭)以上、今年度(2018年4月以降)で既に300以上の数の鳥やタヌキが保護され、治療を行ってきました。
夏は台風の影響などで鳥が怪我をして運ばれてくる事が多いのですが、冬は疥癬(かいせん)という病気になっているタヌキが多く運ばれてきます。
疥癬のタヌキです。お尻周辺の毛が抜け落ちしまっています。
「疥癬」とは、ダニが原因となる皮膚病です。強い痒みを伴い、毛が抜け落ちます。免疫が弱まっている時には重症化し、皮膚が分厚く固くなってしまいます。また、皮膚がガサガサになり剥がれ落ちてしまいます。
正直、そのような状態になったらお世辞にもかわいいとは言えません...。何も知らない方が疥癬タヌキを見たらびっくりしてしまうと思います。
重症例ではこのようにとても固くガサガサした皮膚が全身に広がってしまいます。
一見、治るのかこれ...と思われるかと思いますが、大丈夫です、きちんと薬を投与してダニを駆虫して時間をかければ、元通りの健康な皮膚のタヌキに戻ります。
しかし、免疫力の低下で別の病気になってしまう事もあるため、日ごろの様子のチェックや皮膚以外の検査もしっかり行います。
(別のタヌキで、疥癬ではないタヌキです。)
時間はかかりますがこのような正常な皮膚になり、無事元気になったら野生に帰します。
もう少し寒い冬が続きますが、タヌキ達も健康にこの冬を乗り切ってほしいですね。
(獣医師 さわだ)