更新日:2019.01.27飼育員の小さな幸せ
飼育員の小さな幸せ
カラカラに乾燥した日が続き、巷ではインフルエンザが大流行しているようです。
みなさんお元気ですか?
いつも「ガウルのイチゴです」とか
「ベアードバクのアグアです」とか
担当動物のことばかり書いている私ですが、今回は珍しく、金沢動物園で暮らしている野生動物について書いてみようと思います。
今回はアグアはお休みです...すやすや
私が担当しているガウルとベアードバクの獣舎の裏には、ゴミ置き場があります。
2年くらい前からでしょうか、ある動物が夕方になるとこのゴミ置き場にやって来るようになりました。
ぺろり。
そう、野生のタヌキです。
といっても、不特定多数の個体が代わる代わる来るわけではなく、いつも決まって同じ個体がやって来るのです。
あまりにも何度も顔を合わせるので、すぐに顔を覚えることができました。
お互い何度か顔を合わせるうちに、なんとなく顔見知りになることができ、録画ボタンを押して置いておいたカメラに、こんなに大接近してくることもありました。
(動画に立派な"タマタマ"が映っていたでオスだとわかりました)
とはいえ、相手は野生の個体。飼育動物ではありません。
私から過度に接近したり餌をあげたりすることはせず、向こうも馴れ馴れしく寄ってくることもありません。
「お互い同じ場所を使ってるけど特に気にしてないよね~」
という適度な距離感を保ちながら、でもちょっと「最近見ないけど元気かな?」なんて気にしたりもしつつ、これまで過ごしてきました。
そんなタヌキの"彼"、先日いつものようにゴミ置き場に現れたのですが...
なんとびっくり!
初めて2頭で連れ立ってやってきたのです!
タヌキは基本的に単独で行動する動物ですが、つがいや家族で行動することもあります。
タヌキの繁殖シーズンはちょうど今の時期。
なんと......素敵なパートナーをゲットしたようなのです。
2頭で並んでふんふんと匂いを嗅ぐ姿を見たときの私の気持ちたるや...
なんと言えばいいのでしょう。
大切な友達が結婚したかのような
弟に彼女ができたかのような
なんとも表現し難いですが、とても嬉しく幸せな瞬間でした。
と同時に、いろんなことを考えさせられる瞬間でもありました。
野生動物たちは、普段姿は見せないけれど、意外と私たちの近くで暮らしています。
みなさんの家の周りにも、きっといろんな動物たちがいるはずです。
金沢動物園ではノウサギを見かけることもあります。
顔見知りの"彼"が頑張ってパートナーをゲットしたように、今日も私たちのすぐ近くで、動物たちが命を繋ぎ、生きようと毎日必死で過ごしているのです。
そんな野生動物たちと、過度に干渉せず、私と"彼"のように「同じ場所にいるけど気にしてないよ~」とお互いに思いながら暮らせる環境がずっと日本にあり続けるといいな、と改めて感じました。
怖がりのイチゴですが、タヌキの存在は全く気にしていません。
なんだかちょっと熱くなってしまいましたが...
今日の夕方も、"彼"はパートナーと一緒にやってきました。
なんだかまだぎこちなく、お互いの動きにたまにビクッとしている2頭をこっそり眺めて、ニマニマしながら今日も小さな幸せをわけて貰いました。
あの2頭が無事に子宝に恵まれ、その次も、またその次も、世代が続いていきますように。
今年の干支は亥年。
ニホンイノシシも実は私たちのすぐ近くで暮らしています。
イノシシ年をきっかけに、身近な野生動物について想いを馳せる、そんな1年にしてみるのもいいかもしれないですね。
(くま)