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カンガルーの腸炎の写真

更新日:2020.07.08カンガルーの腸炎

更新日:2020.07.08

カンガルーの腸炎

動物園で飼育されるカンガルーは様々な病気を発症します。

金沢動物園のカンガルーでは、コクシジウムという寄生虫が感染したために腸炎を発症する子どものカンガルーが、非常に多くいました。そこで、子どものカンガルーの腸炎の発症について疫学的な調査を行いました。その結果、次のようなことが分かりました。

 

① 子どものカンガルーは約8か月齢でお母さんの育児嚢という袋から出て、自分で歩き回るようになるのですが、腸炎の発症と死亡例が10~12か月齢で多いことが分かりました。

写真1.jpgZoo Biology 2018 (37): 115-118より改変

 

① 次に8~13か月齢までの子どものカンガルーの血液検査を行いました。その結果、血糖値やコレステロールといった栄養状態に関係する値が、ちょうど10~12か月齢で低下することが分かりました。

写真2.jpgZoo Biology 2018 (37): 115-118より改変

 

行動観察によると子どものカンガルーは8か月齢で育児嚢から出るようになりますが、しばらくは育児嚢の中で過ごす時間が長いです。しかし、10~12か月齢辺りから育児嚢の外で過ごす時間が増えるようになり、合わせて母乳を飲む頻度が低下し、大人と同じようなエサを食べるようになります。どうやらその過程でコクシジウムに感染し、加えて母乳から大人と同じエサに変わる栄養状態の大きな変化のために、感染症に対する抵抗性が落ちてしまい、腸炎を発症しやすい状態になるのではないかと考えられました。

今回の疫学的な調査によって、子どものカンガルーの腸炎の原因の一端を明らかにすることができました。この結果を今後のカンガルーの飼育に役立てて、よりよい飼育環境を目指していきます。