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ゾウの気持ちの写真

更新日:2020.05.04ゾウの気持ち

更新日:2020.05.04

ゾウの気持ち

最近時計などのウェアラブルデバイスを用いて生体情報を取得し、健康管理に役立てる試みが普及しつつあります。動物でもそういったことができないかと考え、東洋紡(株)様にご相談させていただいたところ、「COCOMI®」を金沢動物園での研究用にお借りすることができました。園内のいくつかの動物種で装着し使用感を確認し、どの動物で研究をすれば興味深い情報が得られるか検討しました。その結果、当時蹄の病気を患っており、毎日痛みを伴う治療を行い、レントゲン撮影や採血も時折行っていたインドゾウで心拍数の変化を調べることにしました。

お借りした「COCOMI®」は、ゾウの胸(前肢の付け根)のところにゴムバンドで装着し、心拍数の計測を行いました。まず、蹄の治療をしていた時の心拍数の変化を計測しました。ゾウは疼痛を伴う蹄の治療を行っているときは、治療の前から心拍数が増加し緊張した様子がうかがえました。一方で、蹄の状態が落ち着き痛みを伴わない治療になって以降は、心拍数がそれほど増加することはありませんでした。 

蹄治療.jpg

蹄の治療をしている時の写真

 

次に、蹄の状態を確認するためにレントゲン撮影を行ったときの心拍数を計測しました。レントゲン撮影は日常的にはほとんど行っていない検査なので、ゾウにとって不慣れな処置であると考えられました。計測の結果、獣医師や飼育員がレントゲン撮影機器を持ってゾウに近づくと、ゾウの心拍数は増加し、落ち着かない心拍波形を示しましたが、撮影中はむしろ非常に安定していて、心拍数も低くなりました。

レントゲン.jpg

レントゲン撮影をしている時の様子

 

最後に採血をした時の心拍数の変化を計測しました。採血は月に1回定期的に行っているので、ゾウも採血のことはよく理解していると考えられました。計測の結果、採血の前から採血中にかけて心拍数は大きく変化しなかったのですが、心拍波形が非常に乱れた状態になりました。一方で、採血が終了し止血を始めた途端に心拍波形が落ち着いた波形に戻りました。

採血.jpg

採血をしている様子。手前に写っている携帯電話の画面で心拍波形が確認できます。

 

以上の結果から、東洋紡(株)様からお借りした「COCOMI®」を用いることで、ゾウの心拍数の計測ができました。また、ゾウの心拍数の変化から、ゾウが緊張状態であるか否かの推測ができる可能性も示唆されました。今回の研究で動物の気持ちの理解に、一歩近づけたかもしれません。