更新日:2020.03.19出会いと別れの季節~金沢での5年間~
出会いと別れの季節~金沢での5年間~
みなさんこんにちは。シロイワヤギ・バーラル・カモシカ担当の松野です。卒業、入学、就職...春は出会いと別れの季節ですね。実は私も金沢動物園のブログを書くのは今回で最後になります。
せっかくなので、金沢動物園で勤めた5年間で特に印象深いことを写真とともに振り返りたいと思います。
(2016年7月撮影)
まずは人生で初めて担当したアメリカプロングホーン「ブッチ」。残念ながら2017年に15才(国内最高齢)で死亡し、現在日本でプロングホーンを飼育している動物園はありません。
プロングホーンは哺乳類の中でチーターの次に速く走れることで有名ですが、晩年のブッチは老齢による足腰の衰えが見られ、のんびりと過ごしていました。
(角遊びが大好きでした。2017年4月撮影)
(立ち上がれなくなってからも、よく餌を食べていました。2017年9月撮影)
担当してから2年半の間に、年々変化が見られ、結果最期まで看取りました。死亡する前日は不思議と分かるものですね。「今までありがとう、お疲れ様でした」と声をかけて別れを告げました。
ブッチの死を通して「動物園で飼育している動物の【最期】をどう迎えるか」。これは答えのない課題なんだと感じました。
動物たちは言葉を発せないのでどこが痛いのか、どうして欲しいのか言えません。しかし、
言わない(言えない)ままに、わからないことを「分からないまま」にする訳にはいきません。
日々観察していることや治療等からヒントを得て、なるべく辛くないようにと寄り添いながら、彼らはペットではないということも弁えなくてはいけません。また、辛い場面を何度も見ている中で、延命治療をするべきなのか。色々考えては、考え直して。正直何が正しいのか答えは出ませんでした。ただ、死亡する前日のブッチを見て、これまで必死に生きようとしたその姿に労をねぎらう気持ちで送り出しました。
そしてシロイワヤギの「ペンケ」。実は唯一、5年間担当させてもらいました。ペンケは今年の5月23日で19才になります。国内最高齢、そして国内最後のシロイワヤギです。
(紅葉とペンケ。涼しくなってペンケにとって快適になるこの季節が私も好きでした。
2016年11月撮影)
何度かブログで近況をお伝えしましたが、2018年から高齢による足腰の衰えと蹄に疾患があり、現在はバックヤードのみで飼育しています。ここ1年の間に、何度か立ち上がれなくなりましたが、その度に持ち直して今現在は自力で立ち、エサもよく食べています。
肢が思うように動かなくなった頃から、身の回りの環境を整えてきました。その一環で昨年の9月まではバックヤードで過ごしている様子をモニター越しにご覧いただけるようにしていました(現在は中止しています)。
これは「動物の体調を優先しながら」「お客様の満足度も下げずに」「(高齢動物を)どうやって飼育しているか伝えたい」などなど、様々な面を考慮して実現できたことです。
動物園で働いている上で、このような工夫はどれも大切なことだと思います。私たちが普段どんな方法で飼育しているのか、どのように動物と向き合っているのかというのは、出来る限り発信していくべきだと思っています。
そして良いことだけではなく、時にはご指摘をいただくことで「より良い動物園をみんなでつくっていける」のではないかと私個人は考えています。
今回、新型コロナウイルスの影響により臨時休園となってしまい、皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいですが、この一件が早く終息してくれることを願うばかりです。
5年間有難うございました。ペンケをはじめ、担当した動物たち、同僚、そしてお客様に支えられ、これまでの人生に比べてより豊かで、より実りのある5年間でした。
今後とも、金沢動物園と動物たちをどうぞよろしくお願いします。
飼育展示係 松野