更新日:2025.12.31コアラの日特別ガイド
コアラの日特別ガイド
10月25日のコアラの日特別ガイドでは、金沢動物園生まれの「たんぽぽ」のお話をさせていただきました。今回は、そのときのお話を書かせていただきます。


たんぽぽは、2020年4月26日に生まれたメスのコアラです。
お父さんは「チャーリー」(現在、多摩動物公園にいます)、お母さんは「ぼたん」。金沢動物園では5年ぶりとなるコアラの誕生でした。
ぼたんの袋から出袋(全身が出た)を確認したのは197日齢で、他のこどもに比べると少しゆっくりめでした。


ぼたんは、たんぽぽを本当に大事に育てていました。出袋してからも、担当者が来ると急いでたんぽぽを袋の中に入れてしまったり、たんぽぽの体重測定の様子を見にきたり、測定後たんぽぽをぼたんに返そうとすると担当者に向かってきたり・・・。ぼたんにとってたんぽぽは大切な宝物だったのだと思います。


今ではすっかり落ちついているたんぽぽですが、こども時代はユーカリをかかえて独り占めしたり、ぼたんがお気に入りの止まり木でくつろいでいるのをどかし、ぼたんのマネをしてそこでくつろいだり、じゃれてぼたんを噛んでしまったり・・・と、こどもらしい一面もありました。子煩悩なぼたんは、そんなたんぽぽを叱ることはありませんでした。

たんぽぽが1歳7カ月のとき、妹の「ひなぎく」が生まれました。夜間、ぼたんとよくじゃれあっていたたんぽぽですが、母が出産している間は、少し離れた場所で1時間近くじっとしていました。出産が終わると、またいつものようにじゃれあっていました。

ひなぎくは185日齢で出袋しました。たんぽぽは、なかなかぼたんに近づくことができず、担当者のところに寄ってきていました。見慣れないひなぎくが怖かったのだと思います。5日ほどするとぼたんの側へ行けるようになりました。

ひなぎくが自分で歩けるようになったある日の朝、様子を見に行くと、たんぽぽの背中にひなぎくが乗っていました。たんぽぽは困ったようにしていますが、母のぼたんは、くつろいでいて取り戻しに行こうともしません。お昼のユーカリ交換のときに、ひなぎくがたんぽぽのおなかに回ろうとすると、たんぽぽが嫌がって落としそうになったので、この日はひなぎくをたんぽぽから取り、ぼたんに戻しました。


その後も何度かひなぎくを乗せるたんぽぽを見ましたが、ぼたんが迎えにくると、ひなぎくはちゃんとぼたんに乗り換えていました。
ひなぎくが最後にたんぽぽの背中に乗ったのを確認したのは生後300日齢でした。


2023年8月から4か月間、「ハリー」を産み、育て終わった「コハル」(現在、埼玉県こども動物自然公園にいます)が仲間入りをし、4頭で暮らしました。これまで親子以外のメスと暮らしたことが無かったたんぽぽとひなぎくでしたが、コハルが上手に群れに馴染んだので、1度も争うことなく平和に過ごしていました。

2024年3月、たんぽぽに発情兆候が見られたため、「コロン」とペアリングを行いました。コロンは金沢動物園にくる前、6頭のメスとの間に8頭のこどもを残している優秀なオスです。
ベテランコロンのおかげで、たんぽぽの初めての交尾は無事成功しました。

2024年4月22日、たんぽぽはオスのこども「ポポロ」を出産しました。生後4か月頃から、袋の中でポコポコよく動いているのは確認できましたが、なかなか姿を見せてくれませんでした。178日齢で後肢、201日齢で顔が出ましたが、出袋は209日齢のとき、夜間のビデオでようやく確認ができました。

コアラ舎の大規模工事の間、コアラを飼育するために旧プロングホーン舎を整備し、そこで3か月半過ごしました。母親のぼたんは移動前にリンパ腫を発症し、旧プロングホーン舎に移動して10日程で天国へ旅立ったため、たんぽぽは慣れない環境の中、妹のひなぎくと一緒に過ごしながら、ポポロを育てていました。ここでもまたポポロの姿は、夜間のモニターでの確認の日々が続き、クリスマスイブの日、247日齢でようやく肉眼でポポロの全身の姿を見ることができました。


ポポロはだいぶ大きくなってからも、たんぽぽの背中や頭に移動をするものの、止まり木にはなかなか降りようとしませんでした。これまで見たこどもたちは240日齢前後で止まり木を歩き始めましたが、ポポロは277日齢でようやく少し歩くことができるようになりました。だいぶゆっくりな印象でしたが、280日齢から毎晩、たんぽぽが見守る中、ポポロは止まり木を歩いたり、登り降りをするようになり、歩けることが楽しくて仕方ないように何度も繰り返し動き回っていました。親子での夜練のおかげでポポロはあっというまに歩行が上達しました。



自力で歩けるようになったポポロは、ひなぎくの背中にも乗るようになりました。始めはたんぽぽが取り返そうと追い続けていたため、ひなぎくは怖がっているようすでしたが、だんだんとたんぽぽも慣れてきて追わなくなったため、ひなぎくはポポロを背負ったままユーカリを食べたり、眠ったりしていました。生後313日齢までひなぎくはポポロを背中に乗せましたが、それ以降はポポロが乗ろうとすると叱って乗せることはありませんでした。それでもいつもポポロのことを気にかけ見守っていたひなぎくですが、ポポロが437日齢のときにぼたんと同じ病気で天国へ旅立ちました。


ポポロはオスのこどもだったので、たんぽぽとずっと一緒には暮らすことはできませんでした。ゆっくり成長したポポロでしたが、自立は意外と早く、あまりたんぽぽにべったりではなかったので、親子最後の日の朝も、別々のユーカリポットに座っていました。
ポポロは、たんぽぽの隣の展示場で暮らし始めました。はじめのうちは、たんぽぽもポポロを気にして床に降り、パーテーション越しにウロウロしていましたが、3日もすると降りなくなりました。ポポロはまだ床に降り、ウロウロすることはありますが、少しずつ1頭暮らしを楽しみ始めています。






毛も生えていない小さな命だったたんぽぽが、自分の力でぼたんの育児嚢(袋)までたどりつき、ぼたんに守られながら、ひなぎくを守りながら、たくさんのことを学び、ケガも病気もせず成長できたこと、そしてポポロを産み、立派に育てあげてくれたことは、本当に奇跡の連続だったような気がします。今日も明日もこの先もずっと元気でいてくれることが、担当者の願いです。
たんぽぽが素敵な家族に囲まれて育ったことを、これから先も伝え続けていこうと思います。(コアラ担当 かそ)