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更新日:2025.08.26【獣医ブログ】動物たちよ、おやすみなさ~い①

更新日:2025.08.26

【獣医ブログ】動物たちよ、おやすみなさ~い①

皆さんこんにちは! 病院担当です。

おやすみなさ~いというタイトルですが、残念ながら、スヤスヤ気持ちよく寝ているカワイイ動物たちの紹介ではありません。

 

動物を寝かせる「麻酔」のお話です。

 

「麻酔」とは、薬を使って身体の一部、もしくは全身の知覚や運動機能を一時的に失わせることをいいます。

 皆さんも、歯の治療をする時や手術をする時など、麻酔をかけられた経験がある方もいらっしゃるかと思います。

人間の場合は、痛みを感じるような検査や治療をする時に、痛みを取り除くために麻酔を使うのが一般的です。

 

では動物はどうでしょう?

 

動物の場合、人間同様に「痛みを取り除く」ために使用するのはもちろんですが、動物に動かないでいてもらう「不動化」のためにも麻酔を使用します。

保定やハズバンダリートレーニングでできる検査もありますが、動物の種類や診療内容によっては麻酔が必要となります。

また、動物園の動物の場合、人が触ることのできない猛獣や大型動物なども多く、人間側の安全のためにも麻酔による「不動化」は大切です。

 

動物園の動物は多種多様。動物の大きさや性質に合わせて麻酔薬の種類や投与方法を変えています。

今回は当園での麻酔方法をいくつかご紹介します。

 

まずはこちら。

麻酔銃.jpg

麻酔銃です。

麻酔薬の入った特殊な注射器が銃口から飛び出し、これが動物の体に刺さると薬液が注入される仕組みになっています。

シマウマやオカピ、ライオンなど、人が保定することのできない大型動物や猛獣でよく使用します。狙うのはお尻や肩などの筋肉。

適切な量が筋肉内に注入されてからしばらく経つと、動物達はフラフラ、ウトウトし始めます。動物が完全に動かなくなったら、人が近づいて処置を行います。

 

小型~中型のサルや小型ネコのように、人が網で捕獲できる動物の場合には、麻酔銃は使わず、網で捕獲した上で直接麻酔薬を注射することもあります。

 

上記の方法では、麻酔薬を筋肉に投与しますが、静脈内注射が容易にできる動物の場合、注射で血管の中に直接麻酔薬を入れます。

麻酔静注.jpg

この写真はリカオンの後ろ足の静脈から麻酔薬を注入しているところです。

家畜であるウマや、人が動きをおさえた状態での静脈内投与が可能なカンガルーやリカオンなどの動物ではこの方法を使っています。

筋肉ではなく血管内に薬を入れることで、麻酔薬が素早く全身に回り、すぐに眠らせることができます。

 

続いてはこちら。

ボックス、マスク.jpg

モルモットや小さな鳥などでは、ガス麻酔を使用します。

マスクを鼻と口に直接当てたり、箱に動物を入れて箱の中に麻酔ガスを充満させたりすることで、動物たちを眠らせることができます。

注射による麻酔に比べて麻酔の深さを調整しやすく、比較的安全性が高いため、ズーラシアではよく使う手法です。

 

いかがでしたか?

動物たちを眠らせる方法について知っていただけたでしょうか?

 

麻酔は、薬剤を使って人為的に知覚や運動機能を失わせるため、常にリスクも伴います。

次回のブログでは、麻酔を「安全に行うための方法」についてご紹介します。

お楽しみに~!

 

☆病院班☆