更新日:2026.08.10満月の夜に。
満月の夜に。
先日、横浜市内の公園でアカテガニの放仔を観察してきました!
今回は、その様子をご紹介します。
※カニの産卵は「放仔(ほうし)」と呼ばれます。
ところで皆さん、アカテガニはご存じでしょうか?
アカテガニはその名の通り赤い手(鉗脚)が特徴的なカニです。

では、なぜ題名が「満月の夜に。」なのかというと...
実はアカテガニは7月~9月の大潮・満月の頃に山から海岸近くにきて放仔を行います。
アカテガニは本来、海で生活するカニではありません。しかし、アカテガニの子ども(ゾエア幼生)は、約1か月の間海でプランクトンとして生活するため放仔は海で行う必要があります。
私が見に行った日もかなりキレイな満月が空にあがっていました。

(スマホで撮影したためぼやぼやですが...(-_-;))
今回は18時30分頃に観察を開始しました!さっそくビオトープ付近を散策してみると...。
歩き出して10秒ほどでアカテガニを発見!

その後、19時過ぎ頃に海に出発し始めた個体を発見したので、ついていくことにしました。
(※カニへの負担を極力減らすために遠目から観察しています。)
私たちの足では10秒もかからない道のりですが、カニにとっては過酷な道のりの始まりです...!
今回、観察した場所では人通りのある道を超える必要がありました。夜なのでそこまで人の通りは多くないとはいえど踏まれないように要注意です。
縁石も攻略し、どんどん海へ近づいていきます。

しかし、アカテガニはどうして海の方向がわかるのでしょう?
実は、アカテガニが海の方向がわかる理由には、次のような説があります。
- 地面の傾斜をたどっている
普段暮らしている山や森から、地面の傾きを感じ取り、低い方(海)に向かって下っている。 - 海側の明るさを頼りにしている
海は陸に比べて開けているため、光の方向や明るさの違いを手がかりにしているとされています。 - 優れた嗅覚で潮の匂いを感知している
潮の香りを嗅ぎ分けることで、海のある方向を判断しているという説もあります。
いずれも説ですが、アカテガニはさまざまな感覚を使いながら、海に辿りついているとしたらすごいですね!

(↑草むらを進むアカテガニ)
放仔のブログということもあり、ぜひ皆さんに卵をよく見てもらいたいのですが...卵を守っている大切な時期であるため、お腹に抱えている卵の様子はイラストで紹介します!
(※近くで見ると歩いている体勢からでも卵を確認することが出来ます。近づいて確認したい場合は、できるだけ短い時間で済ませましょう。)

イラストの赤枠で囲われた黒い部分が卵です。
よく見ると小さなつぶつぶの黒い卵がたくさんついています。「ふんどし」というのは、腹節(ふくせつ)というカニのお腹を包むように折れ曲がった部分のことです。
このふんどしで自分の体にしっかり固定して抱えています。
そして、ついに海岸に到着!
水面にお腹をつけて体をふるわせること数秒で放仔終了です。

(写真半分から上の黒い部分が水面です。)
無事に放仔を終えたアカテガニは、再び山へと帰っていきました。
私たちにとってはほんの短い距離でも、アカテガニにとっては外敵となる生きもの、人、縁石など、さまざまな困難を乗り越える大冒険です。それでも毎年、満月の夜に命をつなぐため海へ向かう姿には、自然のたくましさを感じました。
普段はなかなか目にすることのできないアカテガニの放仔。もし夏の満月の夜に海辺を訪れる機会があれば、そっと静かに見守ってみてはいかがでしょうか。

佐藤