更新日:2026.11.03タヌキは無事お引越ししました🐾【後編】
タヌキは無事お引越ししました🐾【後編】
タヌキお引越し大作戦の続きです。(前編はコチラ)
今回の内容はブログというよりレポートです。特に後半は写真が少なく、ほぼ読み物になってしまいました。ご興味のある方はお付き合いください。
ヒフミの話に戻ります。
ヒフミのために箱を作りました。最初はただのトンネルのような箱の枠。
え、普通に入ってくるじゃん...!
全くなにも疑いのない顔、曇りなきまなこ...
ヒフミはこの箱を気に入ってくれたようで、「ヒフミがいない!」と思うとこの中で休んでいたことが何度もありました。
どっしりと。
大丈夫そうなので、次の段階で手前側の顔の出る部分を半分に狭めました。
全く問題なさそうでした。
次は、箱の入口側半分に板を取り付け、入口を狭めました。
怖がることなく、いつも通り入れました。
最後に手前側を最終段階まで狭め、金網も張りました。これで手前側は完成です。
全く問題なく、この中で餌を食べ、休息するヒフミ。
うん、大丈夫!ヒフミは早い段階からそう思えました。
さて問題です。ヒフミが箱に入った後、どうやってこの箱を閉めるのでしょうか。
正解は、寝室の構造(サイズ)と扉を利用する、です。
この上の写真の左側黒い部分が寝室の扉です。この扉は寝室の内側に開きます。開けるとぴったりと箱の入口部分の空間がふさがるのです!
下の写真は箱の完成形です。左側を細工し、ふた(青い枠部分)は落として閉める仕様にしました。
つまり、ヒフミが箱に入る→餌を食べているのを確認する→寝室の扉を開ける(=実質ヒフミは閉じ込められる)→箱のふたを落とす=ヒフミ箱入れ完了、という作戦です。
当日の朝、いつも通り展示場でまったりしている2頭の姿。安心しました。
そしていつも通り「おはよう」と声をかけました。心の中では「いざ!」
いつも通りヒフミに寝室に入ってもらい、ヒフミもいつも通り箱の中の餌を食べてくれました。この時、代番者のI職員にも立ち会ってもらっており、ヒフミの様子を確認してもらっていました。(扉を開ける位置からヒフミの様子が自分で確認できないためです。)
(私)「ヒフミ食べてますか?」
(I職員)「食べてますよ!」
(私)「扉開けます!開けました!」...静かすぎる...
(私)「ヒフミ食べてますか?!」
(I職員)「食べてます!」
(私)(うそでしょ?箱に閉じ込められたんだよ?)
(私)「本当に食べてるんですか?」
(I職員)「ちょっと後ろ向いてますが食べてます!」
(私)(ええー、ヒフミすごい!)「じゃあふた閉めます」
ふたを下ろしました。ヒフミ箱入れ完了です。
(箱に入れたごほうびに少量のお肉を追加で与えているところ。この状況で食べられるのは強い!)
では、ウタは...なのですが、結局その後も、ウタの反射神経に感心させられるばかりで、私がキャリーの扉を閉められる日が来る気配はなかなか感じられませんでした。毎日隣で見張られストレスを感じながらごはんを食べるより、なにも心配することなくおいしくごはんを食べられる毎日の方が、残された野毛山の生活を穏やかに過ごせて良いのではないか...。"人として"はこんなにストレスになるトレーニングは早く辞めてしまおうと何度も思ったのですが、"飼育員として"はクリアしてもらいたい、したいという欲がなかなか消えませんでした。なんとなくいけそうな気がした日も時々あったがために、結論を出すのに時間がかかってしまいました。
結局は、たもで捕獲し、キャリーに入れました。ひゅんっと捕って、ひゅんっと入ってもらったので、ウタも「何をする!!」と思ったとは思いますが、それはあっという間の作業で済みました。トレーニングで自発的にキャリーに入り、閉められても平気という理想は実現できませんでしたが、当日の負担は最小限にできたのではないでしょうか。もっと早く決断できていれば日頃のストレスをもっと軽減できただろうという反省があります。
かわいそう、もっと他に方法はあったのでは、と思われるかもしれません。
もちろんヒフミと同じ箱を作ろうかと考えたこともありました。キャリーを寝室よりも広い展示場に置いてみたこともありました(ウタはフェンスを駆け上がり「ウウーッ!」とうなり、ただ時間が過ぎていくだけでした)。
寝室がもう少し広ければ、とか、そもそも私とタヌキたちとの関係を築ける時間がもっとあればとか、言い訳はどうしようもないことを並べてしまいますが、限られた時間、空間、条件で、「人も動物も安全に」を第一にした結果、このように判断しました。(※ウタをたもで捕獲することに危険はないと考えていました。また、今回のトレーニングの目的は、期限の決まった搬出のためであったということで、長期的な体調管理を目的としたトレーニングであった場合はじっくり時間をかけて続けることに意義はあります。その場合は何年もかかる場合があっても地道に続けていきます。)
(こっちをじっと見ているウタとそうでもないヒフミ。ウタはカメラ目線の写真が多く、ウタからもよく観察されていたんだなあと感じられます。)
4月から担当になり、10月に搬出という約半年のタヌキたちとの付き合いでしたが、これまで担当してきた動物たちとは全く違う感覚、課題、模索...様々な経験をさせてもらいました。自分勝手なことと分かったうえで敢えて言えば、もっとタヌキという種を知りたかったですし、ヒフミとウタとじっくり向き合いたかったなと思います。
また、違う視点から驚いたことといえば、タヌキがとっても人気動物だということ!
今回のありがとうガイドの少し前に実施した、紙芝居とクイズ大会にも100人以上ものお客様が集まってくれました。目の前の大勢のお客様に「こんなにもたくさんの人がタヌキの話を聞いてくれてる!!」と感動しました。もっと上手にお話しできればよかったのですが...
私たちと同じ日本で暮らす仲間であるタヌキについて知ってもらうのは動物園の役目でもあります。まだまだいろんなイベントを企画してみたかったです。
この経験は今後に活かしていこうと思います。
ヒフミ、ウタ、短い間だったけど、私に新しい経験をさせてくれてありがとう。
保護されてつながった命、出会った2頭。これからも末永く仲良く元気に暮らしてね!!
ズーラシア到着後、タヌキ舎内を探索するヒフミ(上)とウタ(下)
2026年度タヌキ担当
(ズーラシアから戻る時、最後に、ヒフミに「ヒフミん、ウタちゃんをよろしくね」と伝えてきました。)